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せんきょまんだん

選挙漫談

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《選挙漫談(せんきょまんだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,632 字 · 6 頁

青空文庫

投票を売る

投票値段は、一票につき、最低五十銭から、一円、二円、三円と、上って、まず、五円から、十円どまり位いだ。百姓が選挙場まで行くのに、場所によっては、二里も三里も歩いて行かなければならない。

ところが、彼等は遊んでいられる身分ではない。丁度、秋蚕の時分だし、畑の仕事もある。そこで、一文にもならないのならば、彼等は棄権する。二里も三里もを往って帰れば半日はつぶしてしまうからだ。

金を貰えば、それは行く。五十銭でもいゝ。只よりはましだ。しかし、もっとよけい、二円でも三円でも、取れるだけ取っておきたい。取ってやらなければ損だ。

どうして、彼等が、そういうことを考えるようになるか。

彼等も昔の無智な彼等ではない。県会議員が、当選したあかつきには、百姓の利益を計ってやる、というような口上には、彼等はさんざんだまされて来た。うまい口上を並べて自分に投票させ、その揚句、議員である地位を利用して、自分が無茶な儲けをするばかりであることを、百姓達は、何十日となく繰返えして見せつけられて来た。

だから、投票してやるからには、いくらでも、金を取ってやらなければ損だ、と、そういう風に考えだしたのである。