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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《邪宗門(じゃしゅうもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 頁

青空文庫

」と、まるで子供をあやすように、笑って御慰めなさいました。

二十一

それから一月ばかりと申すものは、何事もなくすぎましたが、やがて夏も真盛りのある日の事、加茂川の水が一段と眩く日の光を照り返して、炎天の川筋には引き舟の往来さえとぎれる頃でございます。ふだんから釣の好きな私の甥は、五条の橋の下へ参りまして、河原蓬の中に腰を下しながら、ここばかりは涼風の通うのを幸と、水嵩の減った川に糸を下して、頻に鮠を釣って居りました。すると丁度頭の上の欄干で、どうも聞いた事のあるような話し声が致しますから、何気なく上を眺めますと、そこにはあの平太夫が高扇を使いながら、欄干に身をよせかけて、例の摩利信乃法師と一しょに、余念なく何事か話して居るではございませんか。

それを見ますと私の甥は、以前油小路の辻で見かけた、摩利信乃法師の不思議な振舞がふと心に浮びました。そう云えばあの時も、どうやら二人の間には、曰くがあったようでもある。――こう私の甥は思いましたから、眼は糸の方へやっていても、耳は橋の上の二人の話を、じっと聞き澄まして居りますと、向うは人通りもほとんど途絶えた、日盛りの寂しさに心を許したのでございましょう。