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きょうしゅうのしじん よさぶそん
郷愁の詩人 与謝蕪村
萩原 朔太郎
線上閱讀萩原 朔太郎《郷愁の詩人 与謝蕪村(きょうしゅうのしじん よさぶそん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,038 字 · 78 頁
菜の花や月は東に日は西に
菜の花や鯨も寄らず海暮ぬ
菜の花や昼ひとしきり海の音
人々は「さび」や「渋味」や「枯淡」やの老境趣味を愛したけれども、青空の彼岸に夢をもつような、自由の感情と青春とをなくしてしまった。しかるに蕪村の俳句だけは、この時代の異例であって、そうした青春性を多分に持っていた。前出した多くの句を見ても解る通り、蕪村の句には「さび」や「渋味」の雅趣がすくなく、かえって青春的の浪漫感に富んでいる。したがって彼の詩境は、「俳句的」であるよりもむしろ「和歌的」であり、上古奈良朝時代の万葉集や、明治以来の新しい洋風の抒情詩などと、一脈共通するところがあるのである。
菜の花や月は東に日は西に
これも明るい近代的の俳句であり、万葉集あたりの歌を聯想される。万葉の歌に「東の野に陽炎の立つ見えて顧みすれば月傾きぬ」というのがある。
菜の花や鯨も寄らず海暮ぬ
菜種畠の遠く続いてる傾斜の向うに、春昼の光に霞んだ海が見え、沖では遠く、鯨が潮を噴いてるのである。非常に光の強く、色彩の鮮明な南国的漁村風景を描いてる。日本画よりはむしろ油絵の画題であろう。
菜の花や昼ひとしきり海の音
前と同様、南国風景の一であり、閑寂とした漁村の白昼時を思わせる。