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きょうしゅうのしじん よさぶそん

郷愁の詩人 与謝蕪村

萩原 朔太郎

線上閱讀萩原 朔太郎《郷愁の詩人 与謝蕪村(きょうしゅうのしじん よさぶそん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,038 字 · 78 頁

青空文庫

山吹や井手を流るる鉋屑

行く春や逡巡として遅桜

人間に鶯鳴くや山桜

山吹や井手を流るる鉋屑

崖下の岸に沿うて、山吹が茂り咲いている。そこへ鉋屑が流れて来たのである。この句には長い前書が付いており、むずかしい故事の註釈もあるのだが、これだけの叙景として、単純に受取る方がかえって好い。

行く春や逡巡として遅桜

「逡巡」という漢語を奇警に使って、しかもよく効果を納めている。芭蕉もよく漢語を使っているが、蕪村は一層奇警に、しかも効果的に慣用している。一例として

桜狩美人の腹や減却す

人間に鶯鳴くや山桜

人里離れた深山の奥、春昼の光を浴びて、山桜が咲いているのである。「人間」という言葉によって、それが如何にも物珍しく、人跡全く絶えた山中であり、稀れに鳴く鶯のみが、四辺の静寂を破っていることを表象している。しかるに最近、独自の一見識から蕪村を解釈する俳人が出、一書を著して上述の句解を反駁した。その人の説によると、この句の「人間」は「にんげん」と読むのでなく、「ひとあい」と読むのだと言うのである。即ち句の意味は、行人の絶間絶間に鶯が鳴くと言うので、人間に驚いて鶯が鳴くというのでないと主張している。句の修辞から見れば、この解釈の方が穏当であり、無理がないように思われる。