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きょうしゅうのしじん よさぶそん

郷愁の詩人 与謝蕪村

萩原 朔太郎

線上閱讀萩原 朔太郎《郷愁の詩人 与謝蕪村(きょうしゅうのしじん よさぶそん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,038 字 · 78 頁

青空文庫

うぐひすや家内揃ふて飯時分

鶯のあちこちとするや小家がち

鶯の声遠き日も暮れにけり

閣に座して遠き蛙をきく夜哉

これきりに径尽きたり芹の中

うぐひすや家内揃ふて飯時分

春の日の遅い朝飯。食卓には朝の光がさし込み、庭には鶯が鳴いてる。「揃ふて」という言葉によって、一家団欒のむつまじい平和さを思わせる。

鶯のあちこちとするや小家がち

「籬落」という題がつけてある。生垣で囲われた藁屋根の家が、閑雅に散在している郊外村落の昼景である。「あちこちとする」という言葉の中に、鶯のチョコチョコした動作が、巧みに音象されていることを見るべきである。同じ蕪村の句で「鶯の鳴くやあち向こちら向」という句も、同様に言葉の音象で動作を描いてる。

鶯の声遠き日も暮れにけり

春の暮方の物音が、遠くの空から聴えて来るような感じがする。古来日本の詩歌には、鶯を歌ったものが非常に多いが、殆んど皆退屈な凡歌凡句であり、独り蕪村だけが卓越している。

閣に座して遠き蛙をきく夜哉

「閣」というので、相応眺望の広い、見晴しの座敷を思わせる。情感深く、詩味に溢れた名句である。

これきりに径尽きたり芹の中

塵芥に埋れた径。雑草に混って芹が生えているのだろう。晩春の日の弱い日だまりを感じさせるような、或る荒寥とした、心の隅の寂しさを感じさせる句である。