輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

のわき

野分

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《野分(のわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,401 字 · 42 頁

青空文庫

もしそんなきっかけがなくて過ぎたら、やがて蔦萬にも遠ざかったであろうしお紋という者も知らずに済んだに違いない、ずっと後になって、又三郎はそう考えては、独りで悲しげに呟いたものである。「本当に、あのときあんなきっかけさえ無かったら」と。

まえの事があってから、お紋はずっと狎れたようすを見せ始めた。彼のほうからも気軽に話しかけるようになった、「鯊と黒鯛」とか、「あんまりだ」などという言葉が二人だけの通言になったようで、「隣りのお客さまは鯊と黒鯛よ」とか、「この吸物はあんまりな吸物だ」そんなことを云い興じた。お紋はようやく十七くらいだろう、さして美しくはないが、どことなくしゃくんだような愛くるしい顔だちで、微笑すると片頬に刻むようなえくぼがよる。上眼づかいにすばやく人を見る眼つきが、特に際だってなまめかしい、その年ごろに顕われる自然の媚で、自分では意識しないのだが、それが却って生なまとした魅力をもっていた。

「お紋はどこに住んでいるんだ」

「お屋敷のすぐ近くでございますわ」

「屋敷を知っているのか」

「ええ、脇屋さまは古くからいらっしゃいますもの、わたくしの家は三つ目橋のそばの徳右衛門町でございますわ」