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のわき

野分

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《野分(のわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,508 字 · 189 頁

青空文庫

女学校から生徒がぞろぞろ出てくる。赤や、紫や、海老茶の色が往来へちらばる。

「先生、罪悪も遺伝するものでしょうか」と女学生の間を縫いながら歩を移しつつ高柳君が聞く。

「そんな事があるものですか」

「遺伝はしないでも、私は罪人の子です。切ないです」

「それは切ないに違いない。しかし忘れなくっちゃいけない」

警察署から手錠をはめた囚人が二人、巡査に護送されて出てくる。時雨が囚人の髪にかかる。

「忘れても、すぐ思い出します」

道也先生は少し大きな声を出した。

「しかしあなたの生涯は過去にあるんですか未来にあるんですか。君はこれから花が咲く身ですよ」

「花が咲く前に枯れるんです」

「枯れる前に仕事をするんです」

高柳君はだまっている。過去を顧みれば罪である。未来を望めば病気である。現在は麺麭のためにする写字である。

道也先生は高柳君の耳の傍へ口を持って来て云った。

「君は自分だけが一人坊っちだと思うかも知れないが、僕も一人坊っちですよ。一人坊っちは崇高なものです」

高柳君にはこの言葉の意味がわからなかった。

「わかったですか」と道也先生がきく。

「崇高――なぜ……」

「それが、わからなければ、とうてい一人坊っちでは生きていられません。