輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

きんぎょはしんでいた

金魚は死んでいた

大下 宇陀児

線上閱讀大下 宇陀児《金魚は死んでいた(きんぎょはしんでいた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 頁

青空文庫

一

一

「おやおや、惜しいことしちまつたな」

思わず口から出たひとりごとだつたが、それを聞きとがめた井口警部が、ふりむいて、

「なんだい。何が惜しいことしたんだね」

というと平松刑事が、さすがに顔を赤らめひどく困つた眼つきになつて、

「いえ……その……金魚ですよ。こいつは三匹ともかなり上等のランチュウです。死んでしまつているから、どうも惜しいことしたと思いまして」

と答えたから、捜査の連中も鑑識の連中もあぶなくぷッと吹きだすところだつた。

眼の前に、人間の死体があつた。

庭先きの土の中に、大ぶりな瀬戸物の金魚鉢が、ふちのところまでいけこんであつて、その鉢のそばで、セルの和服を着、片足にだけ庭下駄をつつかけた人間の死体が、地べたに這いつくばつている。

のちにわかつたが、死の原因は青酸加里による毒殺だつた。死体の両手がつきのばされて、鉢のふちに掴みかかろうという恰好をしている。多分被害者は、苦しみもがき、金魚鉢のところまで這いよつてきて、口をゆすぐか、または、鉢の中の水を飲もうとしたのだろう。その時、まだ口に残つていた毒が水中へしたたりおちたために、金魚も死んだのだと思われる。