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きんぎょはしんでいた
金魚は死んでいた
大下 宇陀児
線上閱讀大下 宇陀児《金魚は死んでいた(きんぎょはしんでいた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 頁
「五月五日の朝のうちですよ。金魚をよこせといつてきたのが、その前の日の夕方でしてね。どうしてだか、ひどくいそいでもつてこいつていうんでした。あいにくと、私のところには、利息代りになるほど金魚がいねえ。同業のところへ行つて、そこから持つていかなくちやならねえから、二日ばかり待つてくれといつたんですが、どうでも、いそいでもつてこいつていうんです。五月五日は、お節句で子供の日でしよう。ちよつとしたあてこみの日で、私は公園の方へ商売に行くつもりだつたんですが、しかたがない、方角ちがいのおやじのところへ、あのランチュウを持つて行つたというわけでさ」
老人が殺されたのは、その五日の夜だつたから、朝と夜との違いはあつても、同じ日に金魚屋が行つて老人に会つたという点が、なんとなく意味あり気に感じられる。
アリバイについて尋ねてみた。
すると金魚屋は、その頃の時刻だつたら、パチンコ屋にいたと答えたから、井口警部はその実否を、平松刑事に命じて確かめさせることにした。あの金魚好きな男に、金魚屋のことを調べさせるのも、ちよつと面白い、と思つただけのことである。
平松刑事は、ほかの方面での聞込みを漁りに出かけていたから、署へ帰つてすぐに、井口警部の前へ呼ばれた。