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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,625 字 · 26 頁
八州屋では親戚知人は元より商売筋へまで八方へ手分けして探したが杳として消息の知れないところから、合点長屋の釘抜親分へ探索方を持ち込んだのだったが、ここに藤吉として面白くないことは、桜馬場の目明し駒蔵の手先味噌松というのが金山寺味噌の担売りをして平常八州屋へ出入りしているという因縁で、始めからこの事件へ駒蔵が首を突っ込んでいることだった。しかも、事毎に藤吉と張り合って、初手から藤吉が死亡ものと白眼んでいる女隠居の行衛を、駒蔵はあくまでも生きていると定めてかかっているらしかった。とはいうものの、藤吉とてもなにもお定――というのがその老婆の名だが――の死を主張するにたる確証を握っているというわけでもなかった。ただそんな気がするだけだった。それが、藤吉にとっていっそうもどかしかった。この上は地を掘り返してもお定の屍骸を発見けて、それを駒蔵の面へ叩きつけてやらなけりゃあ腹の虫が納まらねえ、と頭の中で考えながら箱崎橋の真中に仁王立ちに突っ立った藤吉は、流れの上下へ眼を配った。
昨夜の大雨に水量を増した掘割が、明けやらぬ空を映してどんより淀んでいる。両側は崩れ放題の亀甲石垣、さきは湊橋でその下が法界橋、上流へ上って鎧の渡し、藤吉は眇眼を凝らしてこの方角を眺めていたが、ふと小網町の河岸縁に真黒な荷足が二、三艘集まっている