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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,547 字 · 27 頁

青空文庫

倒れながらも藤吉袖口を握った。走り出す男。小兵の藤吉、橇のように引きずられた。が、指のかかりが抜けて、闇黒から出た男は一目算に闇黒へ消えた。泥にまみれた藤吉、伊兵衛を殺したのと同じ拵えの太短い矢を拾っては、今さらのように身顫いを禁じ得なかった。

「彼男だ、俺にゃあもうわかってる!」

会心の笑みが、泥だらけの藤吉の顔を綻ばせた。

五

「や、親分、どうしましたえ。」

佐平次が飛んで出た。

「転んだ。白痴の一人相撲。面目ねえ。」

鉄瓶の湯がちんちん沸いて、佐平次の心尽し、座蒲団が三つ並んでいた。洗足をとった藤吉、気易に上り込んだ。宗十郎店は佐平次の住居。勘次彦兵衛はまだ来ていない。

「どうでした、御家新おそれいりましたか。」

「口を開かねえ。が、俺らにゃもうわかってる。」

「さいでございましょうとも。」

言っているところへ勘次が帰って、屍骸は番屋へ引き取らせたと復命した。間もなく彦も顔を見せたが、これはえらく意気込んでいた。

「八百駒あ他行だったが――。」

「他行?」藤吉が聞き咎めた。「この荒れの夜中にか。」

「あい。それで土間を覗くてえと、親分、驚いたね、草加屋の杖がころがってた。