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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁
そういう少年ですから、海が、なによりもすきでした。泳ぎもじょうずで、四キロぐらいは、へいきで泳げましたし、やすみには、おとうさんの船にのって、漁のおてつだいに出るのが、いちばんのたのしみでした。船にものれないし、泳ぎもできないときには、学校から帰ると、村はずれの高い岩山の上から、太平洋をながめるのが、日課のようになっていました。
たったひとりで、岩山のてっぺんに腰をおろして、ひざの上にほおづえをついて、じっと、いつまでも、海をながめているのです。はるかむこうのアメリカ大陸まで、無限にひろがっている広大な海、なんとのびのびとした、美しいけしきでしょう。同じ海でも、その美しさは、時によって、びっくりするほど、ちがって見えるのです。まるでかがみのような静かななぎのとき、海一面があわだち、にえたぎるような、あらしのとき、朝日、夕日にまっかにいろどられた海、満月の光で銀色にかがやく海、そのひとつひとつが、みんな、たましいもとろけるように、美しいのです。
その夕方も、一郎君は、学校から帰ると、いそぎの宿題をすませてから、うちをかけだして、岩山の上にのぼり、そのてっぺんに腰をおろして、なつかしい巨大なおかあさんのような海に、じっと見いっていました。