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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁
高橋さんは、自動車のうしろの窓から、しばらく、町をながめていましたが、だれも、あとをつけてくるようすはありません。あとから、走ってくる自動車もありません。このぶんなら、まず安心だと、そっと、胸をなでおろすのでした。
しばらくすると、高橋さんは、タバコが吸いたくなりました。和服の両方のたもとをさがしましたが、たしかに入れておいたはずのピースの箱がありません。賢二君を、まんなかにはさんで、むこうのはしに、こしかけていた明智探偵が、そのようすに気づいて声をかけました。
「高橋さん、タバコならここにあります。さあ、ごえんりょなく。」
それは西洋の葉巻きタバコでした。高橋さんはタバコずきで、ことに葉巻きは大好物でしたから、それをうけとって、火をつけると、スパスパとやりはじめました。
「いかがですか、その味は? ぼくはタバコだけは、ぜいたくをしているのですよ。」
「いや、けっこうです。ひさしぶりに、うまいタバコを吸いました。ありがとう。」
走る自動車の中には、むらさきの煙が、もやのように、ただよい、葉巻きのさきが、だんだん白い灰になっていきました。
それから五分ほど自動車が走ったころ、高橋さんの口から、半分ほどになった葉巻きが、ポロッと、座席の床に落ちました。