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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 頁
五
「でも、駕籠からひどく血が滲み出して居るじゃありませんか、――それとも花嫁はここで殺られたんで?」
「いや、ここへ来てから一刻近くなるんだ、その間に滲み出したのだよ。座布団は厚いし、駕籠はガタガタの辻駕籠じゃない。念入りに拵えた金蒔絵の代物だ、少しくらいの血は滴れる気遣いはない」
「そんなものですかね」
その結構な智恵もまたローズ物になってしまいました。
「若い衆の肩に訊いて見るほかはない――お前たちがここへ来る間に、何んにも気が付かなかったのか」
平次は改めて駕籠屋の方に向き直りました。
「へエ、そう言えば、若いお嬢さんにしては、少し重いように思いましたが」
後棒の老巧なのが小首を傾けるのです。
「少し重い? 最初からそんな心持だったのか」
「へエ、宇田川町を出る時から、そんな気がしました」
「吉原へ飛ばす四つ手は、魂が抜けているから軽いってね」
八五郎は横合いから余計な嘴を容れて、
「馬鹿野郎、場所柄ってことを知らねえのか」
手ひどく平次にたしなめられました。
五
平次は明神下の家へ引揚げて、ひと息つくと、まもなく八五郎がやって来ました。この男が仕事に夢中になると、昼も夜中もありません。