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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁

青空文庫

「呆れてばかりいずに、わけを話してくれ」

八五郎は四方をキョロキョロ見廻しておりますが、その辺にはもうこの狂言を書いた、作者らしいのは一人もいず、お雪はただひたむきにあきれて、暫らくは言葉も出ません。

「今朝知らない女の人が来て、銭形の親分のところに今日は昼ごろからお客様があるから、この着物を着て手伝いに来てくれというんでしょう――どうせ私は着物らしい着物はないでしょう、その女の人のいう通りになって――ここまで一緒に来たんですが」

「それはどんな女だ、若いか年寄りか」

「二十五、六のきれいなお内儀さんでしたよ、――ここまで来ると、今行っちゃまずいから暫らく待ってくれといって、天水桶の蔭へ私と並んで立って、お天気の話や町内の人達のうわさやら、とりとめもない事を話していましたが、親分が来るちょっと前、何処かへ急いで行ってしまいましたよ」

「お前を脅かしやしなかったか、匕首なんか突きつけて」

「まア、そんな事、――それはそれは暢気な話ばかりでしたよ」

この孝行娘は十分に賢こかったにしても、自分がどんな役目を勤めたか、もとより知る由もありません。

八五郎はお雪を引っ立てるように、もとの平次の家へ帰って来ました。