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かぎからぬけだしたおんな

鍵から抜け出した女

海野 十三

線上閱讀海野 十三《鍵から抜け出した女(かぎからぬけだしたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,188 字 · 43 頁

青空文庫

僕は鉄扉を開くと、スルリと外へ出た。そして腰をかがめて、詰所の窓下を通りぬけ、あとは廊下をなるべく音をたてずに疾走したのだった。

「なにをしとるんだ。――」

そのとき詰所の硝子窓がガラリと開いた。

「おい。……誰だ。呀ッ、逃げたなッ。――」

監守の怒号する声、――それにつづいて乱暴にも、ダダーン、ダダーンと拳銃の響き!

ヒューッ、ヒューッ――、廊下を飛ぶように走ってゆく僕の耳許を掠めて、銃丸がとおりすぎた。そして或る弾は、コンクリートの壁に一度当ってから、足許にゴロゴロ転がって来た。いま僕は生死の境に立っていた。無我夢中に、どこをどう突走ったか覚えがないが、建物の外へ出ると、真暗な庭にとびだし、それから、つきあたったところの高い塀にヤッと飛びついて、転がり落ちるように塀の外に落ちた。そのとき精神病院の塔の上で、ウーウーウーとサイレンが鳴りだしたのを聞いた。――僕はそれを後にして、ドンドンと祭の夜の灯の街の方へ逃げだしていった。

そのとき僕の服装は、病院の患者に支給される西洋寝衣だったので、ある橋の畔まで来たとき、それをすっかり脱いで、小脇に抱えて来た紙包を解いて予て用意の詰襟の学生服に着かえ、寝衣の方は紙包みにし、傍に落ちていた手頃の石を錘し代りに結び、河の中へドボーンと投げこんでしまった。