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かぎからぬけだしたおんな
鍵から抜け出した女
海野 十三
線上閱讀海野 十三《鍵から抜け出した女(かぎからぬけだしたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,188 字 · 43 頁
そこで、どこから見ても、学生になりすましたのだった。僕は大威張りで、明るい灯の街へ入っていった。
夜の街は、沸きかえるような賑かさだった。両側の飲食店からは、絃歌の音がさんざめき、それに交って、どこの露地からも、異国情調の濃い胡弓の音や騒々しい銅鑼のぶったたくような音が響いて来た。色提灯を吊し、赤黄青のモールで飾りたてた家々の窓はいずれも開放され、その中には踊り且つ歌う人の取り乱した姿が見えた。また街路の上には、音頭を歌って手ふり足ふり、踊りあるく一団があるかと思うと、また横丁から大きな竜の作りものを多勢で担ぎ出してきて、道路を嘗めるように踊ってゆくのだった。
ラランラ、ララ……。
シャットシャット、ヨイヨイヨイ。
ヒョウヒョウヒョウヒョウ。
いろんな掛け声が、舗道から屋根の上へと狂気乱舞する。僕の心は脱走者であることさえ一時忘れ、群衆の熱狂にあおられ、だんだんと愉快な気持になっていった。
そんな好い気持になってきたのも、あまり長い間のことではなかった。
この歓楽の巷に、突如として響いて来たサイレンの音、――人々は回転の停った活動写真のように踊りの手をやめて、其の場に棒立ちになった。