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かいひいちようちょう

開扉一妖帖

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《開扉一妖帖(かいひいちようちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,898 字 · 40 頁

青空文庫

下へもおりられないんだよ。恩に被るから、何とか一杯。」

「おっしゃるな。すぐに算段をしますから。まったく、いやに蒸すことね。その癖、乾き切ってさ。」

とついと立って、

「五月雨の……と心持でも濡れましょう。池の菰に水まして、いずれが、あやめ杜若、さだかにそれと、よし原に、ほど遠からぬ水神へ……」

扇子をつかって、トントンと向うの段を、天井の巣へ、鳥のようにひらりと行く。

一あめ、さっと聞くおもい、なりも、ふりも、うっちゃった容子の中に、争われぬ手練が見えて、こっちは、吻と息を吐いた。……

――踊が上手い、声もよし、三味線はおもて芸、下方も、笛まで出来る。しかるに芸人の自覚といった事が少しもない。顔だちも目についたが、色っぽく見えない処へ、媚しさなどは気もなかった。その頃、銀座さんと称うる化粧問屋の大尽があって、新に、「仙牡丹」という白粉を製し、これが大当りに当った、祝と披露を、枕橋の八百松で催した事がある。

裾を曳いて帳場に起居の女房の、婀娜にたおやかなのがそっくりで、半四郎茶屋と呼ばれた引手茶屋の、大尽は常客だったが、芸妓は小浜屋の姉妹が一の贔屓だったから、その祝宴にも真先に取持った。