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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《阿難と呪術師の娘(あなんとじゅじゅつしのむすめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 頁
それは微塵の身を以て蒼天を包み取らんとする働きに等しい。果敢なき限りである。さりながら我ゆえに、たとえ一塵の障りなりとも、仏の御苦労の種を増すは弟子の身として恐れ多い。どうか呪いの鬼となることは止めにして下さい。
老女 ――何をいう。それでは三つの道を三つとも逃れる事ではないか。卑怯者!
阿難 ――わたしはこの場合、わたしに適当な道がたった一つあるだけです。それは今あなたが仰った逃れることです。愛慾から逃れる。執縛から逃れる。煩悩の浪風荒き心のへりから、無垢な心の中心点へ近寄って行く。これを逃れるというなら逃れるで結構、卑怯者で結構です。どうかこのまま私を帰して下さい、実はその方が娘さんの為にもなることなのです。
老女 ――いや帰さぬ、わたしの思案は変った。――(老女、部屋の隅より漆黒の毛綱一束を持ち来る。)阿難どの。わたしはもう、そなたを生かしも殺しもせぬ。もちろん逃がしもしませぬ。(毛綱を振って見せ)そなたと娘を一体にくくし、永劫の青銅の像にしてのける。そして未来、世々生々、この恋の双生像を見るものには、一目で身を焼く程の恋の焔むらを起させる。阿難どの。