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かりさかごえ
雁坂越
幸田 露伴
線上閱讀幸田 露伴《雁坂越(かりさかごえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,263 字 · 28 頁
柄の小長い奴を右手に持ったり左手に持ったりしながら、だんだんと川上へ登り詰めた。
やがて前の日叔父の言を聞いて引返したところへかかると、源三の歩みはまた遅くなった。しかし今度は、前の日自分が腰掛けた岩としばらく隠れた大な岩とをやや久しく見ていたが、そのあげくに突然と声張り上げて、ちとおかしな調子で、「我は官軍、我が敵は」と叫び出して山手へと進んだ。山鳴り谷答えて、いずくにか潜んでいる悪魔でも唱い返したように、「我は官軍我敵は」という歌の声は、笛吹川の水音にも紛れずに聞えた。
それから源三はいよいよ分り難い山また山の中に入って行ったが、さすがは山里で人となっただけにどうやらこうやら「勘」を付けて上って、とうとう雁坂峠の絶頂へ出て、そして遥に遠く武蔵一国が我が脚下に開けているのを見ながら、蓬々と吹く天の風が頬被りした手拭に当るのを味った時は、躍り上り躍り上って悦んだ。しかしまた振り返って自分等が住んでいた甲斐の国の笛吹川に添う一帯の地を望んでは、黯然としても心も昧くなるような気持がして、しかもその薄すりと霞んだ霞の底から、
桑を摘め摘め、爪紅さした、花洛女郎衆も、桑を摘め。