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あまよぞうし

雨夜草紙

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《雨夜草紙(あまよぞうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,029 字 · 14 頁

青空文庫

のだ、それから五六日経った、奴さんとろとろ睡っていて、眼を開けてみると、また細君がいない、しかし何時かの夜のことがあっているので、好く眼を据えて見定めてみたが、たしかにいないと云うことが判った、が、また便所へ往っていないとも限らないと思って、十分ばかり起きあがらずに待っていたが、細君は入って来ない、そこでまた廊下へ出て、廊下を日本間の方へ往ったのだ、往ってみると、怪しい囁のしていた室の前の雨戸が五六寸開いているから、それを見ると、その開口を広くして裸足で庭へおりたさ、遅い月が出て、庭は明るかった、池の傍を廻って、新緑の匂のぷんぷんする植込みの下の暗い処を歩いて、仮山の背後になった四阿屋の方へ往ったのだ、四阿屋の中には、人のひそひそと話す声がしていた、枝葉の間からそっと覗くと、月の陰になって中にいる人は見えないが、あまえるような女の声はたしかに細君で、他の声はがすがすする父親の声なのだ、

(なんと云う醜体だ)

と、奴さんは顫ひだしたが、忽ち引返して己の寝室へ入り、机の抽斗にしまってあった短銃を持って、はじめの処へ往き、また、枝葉の間から眼を出して、四阿屋のなかを透かして見た、四阿屋の中では話声はしなかったが、もそりもそりと物の気配がしていた、