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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《雨瀟瀟・雪解 他七篇(あめしょうしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,414 字 · 289 頁
の歓会に逢い得たる事いくばくぞと、さまざまなる物見遊山の懐旧談に時の移るのをも忘れていたが、折から一同は中庭を隔てた向うの小座敷に先ほどから頻と手を鳴らしていたお客が遂に亭主らしい男を呼付けて物荒くいい罵り初めた声を聞付けた。客は誂えた酒肴のあまりに遅い事を憤り、亭主はそれをばひたあやまりに謝罪っていると覚しい。そう心付いて見れば一同の座敷も同じ事、先ほど誂えた初茸の吸物もまたは銚子の代りさえ更に持って来ない始末である。別に大勢の客が一度に立込んで手が足りぬというのでもないらしい。どうした事かと仙果は二、三度続けざまに烈しく手を鳴らしたが、すると、以前の女中が銚子だけを持って来ながら息使いも急しく甚くも狼狽えた様子で、
「どうも申訳が御在ません。どうぞ御勘弁を……。」とばかり前髪から滑り落ちる簪もそのままにひたすら額を畳へ摺付けていた。
「こう、姐さん。どうしたもんだな。そうむやみやたらに謝罪られても始まらねえ。お燗はつけずお肴はなしというのじゃ、どうもこれァお話にならないじゃねえか。」
「唯今帳場からお詫に出ると申しております。どうぞ御勘弁をなすって下さりませ。