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ゆきたたき

雪たたき

幸田 露伴

線上閱讀幸田 露伴《雪たたき(ゆきたたき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,132 字 · 56 頁

青空文庫

殊更此頃は進んでも鎗ぶすまの中に突懸り、猛火の中にも飛入ろう所存に燃えておる。癪に触るものは一ツでも多く叩き潰し、一人でも多く叩き斬ろうに、遠慮も斟酌も何有ろう。御身は器量骨柄も勝れ、一ト風ある気象もおもしろいで、これまでは談も交したなれど、御身の頼みは聴入れ申さぬ。」

と感慨交りに厳しくことわられ、取縋ろうすべも無く没義道に振放された。

「かほどまでに真実を尽して御願い申しましても。」

「いやでござる。」

「金銀財宝、何なりと思召す通りに計らいましても。」

「いやでござる。」

「何事の御手助けなりとも致しましても。」

「いやでござる。」

「如何様にも御指図下さりますれば、仮令臙脂屋身代悉く灰となりましても御指図通りに致しまするが……」

「いやでござる。」

ここに至って客の老人は徐ろに頭を擡げた。艶やかに兀げた前頭からは光りが走った。其の澄んだ眼はチラリと主人を射た。が、又忽ちに頭を少し下げて、低い調子の沈着な声で、

「おろかしい獣は愈々かなわぬ時は刃物をも咬みまする、あわれに愚かしいことでござります。人が困じきりますれば碌でないことをも致しまする、あわれなことでござりまする。