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ゆきとどろ

雪と泥

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《雪と泥(ゆきとどろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,993 字 · 40 頁

青空文庫

「済まない、――」折之助は顔を赤くし、渡された紙包を受取って頭を下げた、「なにしろ五たび逢って五たびとも、娘が茶屋の払いをしているもんだから、いくらなんでも今日はこっちが払わないわけにはいかないんだ、といって、――ほかに頼めるあてはないし」

「小出家は五千石の大身じゃないか、おやじ殿は理財家で、金箱には小判がうなっているというのに、その一人息子がおれなんぞに小遣を借りるなんておかしいぜ」

「済まない、必ずこれは返すから」

「よせよ、つまらない」主馬は土瓶の茶を二つの茶碗に注いだ、「――それで、結局のところどうするつもりなんだ、嫁に貰おうとでもいうわけか」

「まだそこまで考えてはいないけれど、しかしやがてそうなるんじゃないかと思う」

「とにかくしっかりしてくれ、螢と蛇の眼とは同じように光るというからな」主馬は茶を啜りながら云った、「もしも相手が本当に大店の娘で、相当な持参金でも付くとすれば、小出のおやじ殿はよろこんで承知するだろう、いずれにしても早くその店を慥かめておくほうがいいね」

「有難う、近いうちにそうするよ」

折之助も茶碗を取りあげた。

主馬と別れて歩きだしたとき、折之助の顔には暗く塞がれたような色があらわれた。