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ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《雪と泥(ゆきとどろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,993 字 · 40 頁
登って来たのは三人伴れであった。一人がうたい終ると、他の二人がやかましくはしゃぎながら、小屋の前を廓のほうへと去っていった。
「だめだ」と彼は震えながら呟いた、「――やっぱり持っているようじゃない、それだけの遊びをする客はもっと違う筈だ、どう違うかはわからないが、どこかにもっと違う感じがするような気がする、まあおちつけ……」
彼は縁台へ戻ろうとした。そのときまた、下の舟着きからの人の声が聞えて来た。
「えっ、この二百両、みんなでげすか」としゃがれた太い声が云った、「これをそっくりでげすか」折之助はこくっと唾をのんだ。
「そうだ、そっくりよこしな」
「だって旦那それじゃあお約束が違いますぜ」
「考えてみるとな」おっとりした含み声が云った、「おまえが金を持っていると、どうしたって先方にわかってしまう、金というやつは、持ちつけない者が持つとすぐにわかるものだ、それでは面白くない、本当に一文なしということでなければ、あたしの出る幕がくさってしまう、そうだろう平孝」
「それはそうかもしれませんが、なにしろ旦那はお人が悪うげすからな」
二人は堤のほうへ登って来た。一人は客、伴れは幇間であろう、客のほうは肥えた躯に合羽を着、蛇の目傘をさしていた。