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ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《雪と泥(ゆきとどろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,993 字 · 40 頁
いま肌ぬぎで鏡に向っているおつねが、いちばん年嵩であろう、それからげれ松、おしの、ちよのという順らしいが、おしのだけが縹緻も姿も際立ってみえた。
「それからあたしその人に云ったのさ、東仲町に懇意な茶屋がありますから、済みませんがそこまでお伴れ下さいましって」
「その人お侍だったのね」
「しかも御大身のさ」おしのは坐ったまましごきを解いた、「着ている物もぱりっとしているし、刀脇差の拵えもいいし、印籠は高蒔絵だったわ、――梅の井にはちょうどおさんちゃんがいて、あたしが眼で知らせるとすぐにのみこんでくれた」
「恰好を見ればわかるのね、ほんとにおしの姐さんが扮ると、どこから見たって立派な大店のお嬢さんだもの」
「おまえさんに褒めてもらったってしようがないよ」
「この鏡はだめだわ」おつねは鏡に息を吹きかけ、肩に掛けている手拭でそのあとを擦った、「もう研がせなくっちゃ見えやしない、いつもの爺さんは来ないのかしら」
「その人と、今日まで幾たび逢ったの」
「今日で五たびめさ」
「じゃあもうこっちのものだわね」
「聞いたふうなこと云うんじゃないよ、ちょっとあれ取ってちょうだい」おしのは胴抜の長襦袢をぬぎ、壁に掛けてある青梅縞の袷を指さした、「おうさぶい、その火鉢、火がはいってるのいったい、もう少し炭を継いだらいいじゃないか」