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ゆきのシベリア

雪のシベリア

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《雪のシベリア(ゆきのシベリア)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,276 字 · 19 頁

青空文庫

二人は、そういう顔を見られたくなかったので、黙ってむっつりしていた。

……汽車が動き出した。

窓からのぞいていた顔はすぐ引っ込んでしまった。

二人は、今まで押し怺えていた泣けそうなものが、一時に顔面に溢れて来るのをどうすることも出来なかった。……

「おい、病院へ帰ろう。」

吉田が云った。

「うむ。」

小村の声はめそ/\していた。それに反撥するように、吉田は、

「あの橋のところまで馳せっくらべしよう。」

「うむ。」小村は相変らずの声を出した。

「さあ、一、二、三ン!」

吉田がさきになって、二人は、一町ほど走ったが、橋にまで、まだ半分も行かないうちに、気ぬけがしてやめてしまった。

二人は重い足を引きずって病院へ帰った。

五六日間、すべての勤務を二年兵にまかせきって、兵舎でぐう/\寝ていた。

四

「おい、兎狩りに行こうか。」

こう云ったのは吉田であった。

「このあたりに、一体、兎がいるんかい。」

小村は鼻の上まで毛布をかぶって寝ていた。

「居るんだ。……そら、つい、そこにちょか/\してるんだ。」

吉田は窓の外を指さした。彼は、さっきから、腹這いになって、二重硝子の窓から、向うの丘の方を見ていたのであった。