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しもばしら
霜柱
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《霜柱(しもばしら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,328 字 · 29 頁
翌朝、家僕が知らせに来るまえ、喜兵衛はもう起きて着替えをし、井戸端へ洗面に出た。東は白んでいるが、あたりはまだ暗く、地面は霜で白く掩われていた。洗面が済むとすぐに、「ちょっと歩いて来る」と云い、食事をせずに家をでかけた。――鶴ヶ岡までは約二十町ある、町はまだ殆んど眠っていたが、農村から車で野菜を運ぶ農夫たちが、霧の中を近づいて来てはすれちがっていった。空が明るくなるにつれて、霧が濃くなり、鶴ヶ岡の下までいったときには、岡の樹立も見えなかった。
八幡社へゆくには五十段の石段と、その先は稲妻形になった坂道を登らなければならない。その左右は苔の付いた崖で、僅かながらいつも水が湧き出ているため、石段は薄く氷に掩われてい、喜兵衛はそこで三度も滑った。
「おい、しっかりしろ」と三度めに彼は舌打ちをした、「だらしがねえぞ」
石段が終って坂道になった。
勾配はゆるやかであるが、赭土のその道は霜柱が立っていて、浮いた土が雪駄の裏にねばり着くため、歩くのにひどく骨が折れた。初めに左へ登り、次に右へ登る。その二た曲り曲ったところで、喜兵衛はさっと刀へ手をやりながら、立停った。