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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁
会場は静かになり、聴衆の眼はその若者に集まった。
「演説会もくそもねえ」と若者は怒った酔漢のような口ぶりで喚いた、「饒舌るだけで止められるもんじゃねえだ、会社のやつらをぶっ殺せ、おらが佐倉宗五郎になるだ」
とたんに巡査がサーベルを鳴らした。
「弁士中止」と巡査は白い手袋をはめた片手をあげて叫んだ、「演説会は解散」
それがどういうことであるかを、聴衆が理解するにはちょっと暇がかかった。
私はすぐに会場を出たが、そのあと、高品さんの家を訪ねると、やがて集まって来た常連が、大演説大会の話を始め、演壇へとびあがった若者の、勇気と決意を褒めあった。
「おらが佐倉宗五郎になるだって」と秋葉エンジが感動をこめて云った、「あんな大勢のめえでなかなかああは云えねえもんだ、いってえどこのもんだ」
「知んねえな」と三十六号船の留さんが首を振った、「誰も知んねえ顔だってよ、それにしちゃあえれえもんだ」
「おらが佐倉宗五郎になるか」と漁師の源さんが云った、「命を張るってえだからな、ああいう人間がもう五六人もいれば、会社なんぞひねり潰しちまうだがな」
「まったくのところ」と源さんは続けて云った、「こんどの問題じゃ、あの男が頼みの綱だぞ」