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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁

青空文庫

ある。岸がんはさすが男のことで、こんな話をすればするほどみれんな気持が起こる、このへんできまりをつけようと主張し、持って来た催眠薬を出した。そこで栄子も諦め、拵えておいた薬をハンド・バッグの中から取り出した。そのときになってふと、見せろと云われはしないかと心配した。なにしろ男は薬品の外交をやっていたのだから、見られたらばれるに違いないからである。しかし岸がんはなにも云わず、湯呑に水を注いで自分から先にのんだ。栄子も「負けてはいられない」と、同じ湯呑に水を注いで薬をのんだ。

「それから寝床へ横になって抱きあって、またさんざん泣いたわ」と栄子は云った、「あとは話さなくってもわかるでしょ、心中する人間は死ぬまえに一生分もたのしむって、あれはほんとよ、あたいこむら返りを起こしちゃったわ、先生ったら、飲ましてよ」

いつか眠ってしまったらしい。変な声で眼をさますと、岸がんが苦しんでいた。大の字なりにのびたまま、しきりにげっぷうをしていた。栄子ははっきり眼がさめ、すると恐ろしさと苦しさとではね起きた。

「あたし心中したんだと気がついたら、胸の奥のところが焼けるように苦しいの、岸がんはのびたままげっぷうをしているでしょ、大変だと思ったらあとは夢中で、はだしのまま駐在所へ駆け込んじゃったわ」