輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁
夕方のことで、漁師や船頭が四五人飲んでいたけれども、誰もその男に注意する者はなかった。見慣れないよそ者が来るのは常のことだし、自分たちに利害関係のない限り、そんな者に気をとられるような習慣はなかったからだ。――男は鳥打帽の庇をひきさげ、顔を隠すようにして飲んでいたが、やがて隣りにいた船頭の一人に話しかけた。去年この土地で心中事件があったそうだが、と訊いたのである。訊かれた船頭は首を振った。知らないのではなく、すっかり忘れてしまったらしい。すると男は躍起になった。
「松の家の女ですよ」と男は云った、「ごったくやの松の家の女で、名前は慥かお栄とか栄子とか聞きましたがね、ええ慥か薬の外交員と心中したとかって」
その話を漁師の一人が聞き咎めた。そしてその男の顔をひそかに覗いて見ると、びっくりして駐在所へ走っていった。去年とは巡査が変っていたけれども、心中事件は知っていたらしく、すぐにとんで来て男を捕えた。
「おまえは岸がんじゃあないか」と巡査が訊いた、「ここに証人がいる、嘘を云ってもだめだぞ、どうだ」
「へえ」と岸がんはうなだれた、「私はその岸がんでございます」