輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

せいねん

青年

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《青年(せいねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 頁

青空文庫

酒も余り上等ではないね」

「お客次第なのだよ」

「そうかね」純一はしょさいなさに床の間の方を見廻して云った。「なんだね。あの大きな虎は」

「岸駒さ。文部省の展覧会へ出そうもんなら、鑑査で落第するのだ」

「どうだろう。もうそろそろ帰っても好くはあるまいか」

「搆うものか」

暫くして純一は黙って席を起った。

「もう帰るのか」と、瀬戸が問うた。

「まあ、様子次第だ」こう云って、座敷の真中を通って、廊下に出て、梯を降りた。実際目立たないように帰られたら帰ろう位の考であった。

梯の下に降りると、丁度席上で見覚えた人が二人便所から出て来た。純一は自分だけ早く帰るのを見られるのが極まりが悪いので、便所へ行った。

用を足してしまって便所を出ようとしたとき、純一はおちゃらが廊下の柱に靠り掛かって立っているのを見た。そして何故ともなしに、びっくりした。

「もうお帰りなさるの」と云って、おちゃらは純一の顔をじっと見ている。この女は目で笑うことの出来る女であった。瞳に緑いろの反射のある目で。

おちゃらはしなやかな上半身を前に屈めて、一歩進んだ。薄赤い女の顔が余り近くなったので、純一はまぶしいように思った。