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せいねん

青年

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《青年(せいねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 頁

青空文庫

最初に旅宿をことわられてから、或る意地の悪い魔女の威力が自分の上に加わっているように、一歩一歩と不愉快な世界に陥って来たように思われる。それが厭でならない。

角刈の男が火鉢を持って上がって来た。藍色の、嫌に光る釉の掛かった陶器の円火鉢である。跡から十四五の襷を掛けた女の子が、誂えた酒肴を持って来た。徳利一本、猪口一つに、腥そうな青肴の切身が一皿添えてある。女の子はこの品々を載せた盆を枕許に置いて、珍らしそうに純一の蹙めた顔を覗いて見て、黙って降りて行った。男は懐から帳面を出して、矢立の筆を手に持って、「お名前を」と云った。純一は東京の宿所と名前とを言ったが、純の字が分からないので、とうとう自分で書いて遣った。

純一はどうして寝ようかと考えた。眠たくはないが、疲労と不愉快とで、頭の心が痛む。とにかく横にだけはなりたい。そこで袴を脱いで、括り枕の上にそれを巻いた。それから駱駝の膝掛を二つに折って、その二枚の間に夜着の領の処を挟むようにして被せた。こうすれば顔や手だけは不潔な物に障らずに済む。

純一は革包を枕許に持って来て置いた。それから徳利を攫んで、燗酒を一口ぐいと飲んで、インバネスを着たまま、足袋を穿いたまま、被せた膝掛のいざらないように、そっと夜着の領を持って、ごろりと寝た。