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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
その日、発送日だった。だから、彼はいつもより機嫌が悪かった。が、ただ一つ、彼がかなり苦心して纒めあげた「本邦畳史」の第一回目が掲載されているのを見るという楽みがあった。ところが、刷り上って来たのを見ると、それがどこにも載っていなかった。
「どうして載せてくれないんですか?」と、社長に抗議するのも恥しい気持で、豹一は赧くなって、そわそわと新聞から眼を離した。
(没にされたのだろうか、それとも次号廻しだろうか?)そんなことをしょんぼり考えているところへ、印刷所から、別刷りだと言って、百部ほど刷り上りを持って来た。見ると、「本邦畳史」が相当大きな見出しで載っていた。
「別刷りというのもあるんですね」と豹一はそれとなく社長に訊いてみた。
「へえ、おまっせ」社長はアルミの金盥にいれた糊をしきりにこねまわしながら、ぼそんとした声で言い、そして、「こら内緒やが――」最近当局の新聞取締がきびしくなり、むやみに広告の段数をふやすことが出来なくなったので、検閲係や官庁へ提出用の分として、広告の段数を減らし、記事の段数をふやした別刷りの新聞をつくって置くのだと、社長は説明した。