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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
土門の話を想い出していた。
(書かれると人気に障わると、いうんだろう。この女はなによりも人気が大切なんだ。監督との問題でも、人気を出すための打算なんだ)
その女のことを散々悪く書いてしまったあとでも、なおこんな風に頭のなかで鞭をふるっていたのは、ひとつには豹一は多鶴子に対して済まぬと思う自分の気弱さを、振い立たせるためでもあったろうが、じつは、丁度そこへアイスクリームが運ばれて来たからであった。
「困るっていうわけでも……」ありませんと、多鶴子がいい掛けるのを、豹一は畳み掛けて行って、
「人気にかかわるっておっしゃるんでしょう!」
多鶴子はふと眼を落した。
「人気ですって……?」語尾が落ちた。
「違いますか?」
「違います!」いきなり、多鶴子の眼の輝きが睫毛を押しあげた。「人気、人気って皆様がおっしゃいますが、……」多鶴子の声は朗読口調になった。
「……私そんなに自分の人気のことばかし考えているのでしょうか。……たとえば、矢野さんのことにしろ、皆様は、村口は良い役をつけてもらいたさに、矢野に貞操を与えたなんて、ひどいことをおっしゃいますが、私そんな気で矢野さんとお交際したのでしょうか。