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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁

青空文庫

寒いのに夜なかまでよう活躍しよった。没になったと知ったら、悲観しよるやろ)そう思っているところへ、豹一から電話が掛って来た。

「僕、毛利です」

編輯長は相手が誰か咄嗟にわからなかった。若い声だから、たいした人間からではないのだろうと、

「毛利て誰やねん?」

「はあ。あの社会部見習の毛利豹一です」

「なんや、君か? なんぞ用か?」

「はあ、あのう、さっきの原稿もう印刷に廻ってますか?」

「まだやぜ。それがどないしてん?」

「まだですか。そうですか。そんなら、大変勝手ですけど、あれを没にして下さいませんか?」

「なんでや?」

「はあ。あのう、ちょっと事情がありまして……」

「そうか。そんなら、君のいう通りにしとくわ」編輯長は微笑した。「そいで、いまどこにいるねん?」

「はあ。心斎橋の不二屋に……」

「誰といるねん? 恋人とか?」

編輯長は思いがけぬ豹一の申出でにすっかり気を良くして、そんな冗談をいい、

「それじゃ、くれぐれもお願いいたします」

という豹一の汗のたれるような言葉を耳に残しながら、電話を切った。途端に、編輯長は、

(あいつ村口多鶴子に頼まれよったんやろ。いま会うとるのやろ)