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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁

青空文庫

下手に呶鳴りつけて、怒らすと再び飛び出してしまうおそれがあると、豹一の気性をのみこんでいたから、お君が嬉し涙をこぼしたほど、口調を柔らげたのである。

「家をあけるのは、そら構へんぜ、しゃけど、きまりだけはきちんとしといてもらおう。節季はもう過ぎてるぜ」それだけを言った。

頭から呶鳴りつけて来るものと身構えていたから、豹一はすかされた気持だった。

(なるほど、金のことを言いやがったわい)豹一は思わずにやりと微笑した。

一見はなはだ和かな風景であった。

「利子をつけてお渡しします」

「いつくれるんね?」

「今夜お渡しします」

「そうか? 間違いなや」

安二郎はちらと上機嫌な表情を見せた。お君が豹一のために食事を出してやっているのを見ても、この際いやな顔はせぬことにした。

母親の給仕でお茶漬を食べていると、豹一はじーんと気が遠くなるほど、頭の底が静まって、放心したような快いけだるさが感じられた。食べなれた漬物の味もなつかしかった。食事が終ると、豹一は再びオーバーを着た。

「どこへ行くねや?」

「社へ金もらいに行くねや」

「真っ直ぐ帰っといでや」

「大丈夫や」そう言って、家を出た。