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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《青鬼の褌を洗う女(あおおにのふんどしをあらうおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 頁

青空文庫

力をいれたわけではないのだろうけど、私はウッと目を白黒させたまま虚脱のてい、エッちゃんは私の肩にグイと手をかけて掴み起して、

「オイ、死のう。死んでくれ」

「いや」

「もう、いけねえ、そうはいわせねえから」

私はいきなり軽々と掴みあげられ、担がれてしまった。私はやにわに失神状態で、何の抵抗もなくヒョイと肩へ乗せられてしまったが、首ったまにかじりつくと、何だかわけの分らないような一念が起って、

「いいの、私は悲鳴をあげるから、人殺しッて叫ぶから、それでもいいの」

雨戸を押しひろげるためにガタガタやるうち片手を長押にかけて、

「我を通すのは卑怯じゃないの。私は死ぬことは嫌いよ。そんな強要できて? 死にたかったら、なぜ、一人で死なないの」

エッちゃんは、やがて蒸気のような呻き声をたてて、私を雨戸の旁へ降して、庭下駄はいて外の闇へ歩き去った。私は声をかけなかった。

私は眠るときでも電燈を消すことのできない生れつきであった。戦争中でも豆電球をつけなければ眠られぬたちで、私は戦争で最も嫌いなのは暗闇であった。光が失われると、何も見えないからイヤだ。夜中に目がさめて電燈が消えていると、死んだのか、と慌てる始末であった。