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ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《風琴と魚の町(ふうきんとさかなのまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,372 字 · 27 頁
男の子は笑っていた。
白壁の並んだ肥料倉庫の広場には針のように光った干魚が山のように盛り上げてあった。
その広場を囲んで、露店のうどん屋が鳥のように並んで、仲士達が立ったまま、つるつるとうどんを啜っていた。
露店の硝子箱には、煎餅や、天麩羅がうまそうであった。私は硝子箱に凭れて、煎餅と天麩羅をじっと覗いた。硝子箱の肌には霧がかかっていた。
「どこの子なア、そこへ凭れちゃいけんがのう!」
乳房を出した女が赤ん坊の鼻汁を啜りながら私を叱った。
4 山の朱い寺の塔に灯がとぼった。島の背中から鰯雲が湧いて、私は唄をうたいながら、波止場の方へ歩いた。
桟橋には灯がついたのか、長い竿の先きに籠をつけた物売りが、白い汽船の船腹をかこんで声高く叫んでいた。
母は待合所の方を見上げながら、桟橋の荷物の上に凭れていた。
「何ばしよったと、お父さん見て来たとか?」
「うん、見て来た! 山のごツ売れよった」
「ほんまな?」
「ほんま!」
私の腰に、また紫の包みをくくりつけてくれながら、母の眼は嬉し気であった。
「ぬくうなった、風がぬるぬるしよる」
「小便がしたか」
「かまうこたなか、そこへせいよ」