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ふうちそう
風知草
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《風知草(ふうちそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 頁
永い間沈黙していた後、重吉は、はじめて顔を向けて、正面からひろ子を見た。ああ、やっと重吉にとってひろ子は再び見るに耐えるものになった。ひろ子は、両手の間に顔を挾んだ。
「ね、わかる?」
「――絶対の支持なら、どうしてあんなことを云うのかい」
「わるい御亭主の見本?」
「そうさ」
「あら、だって母親だって自分の可愛い児に云うわ、わるい児の見本ですよ、ぐらい……」
「そういう調子じゃなかった」
ひろ子は、じっと重吉の顔をみつめた。苦しく、重く閉されていた重吉の表情はほぐれはじめて、二つの眼の裡にはいつもの重吉の精気のこもった艶が甦っている。ひろ子は、うれしさで、とんぼがえりを打ちたいようだった。
「生きかえって来た、生きかえって来た」
ひろ子は、小さい声で早口に囁いた。
「なにが?」
「――わたしたちが……」
重吉は、やっとわかったがまだ怪訝だという風に、
「しかし、ひろ子の調子に、そんなユーモラスなところはなかったぜ」
と云った。
「そうだったこと?――」
ひろ子は、恐縮しながら、いたずらっぽく承認した。
「そこが、つまりあなたのおっしゃるがんばりの情けなさなのね、きっと。