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くびちょうだい
首頂戴
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《首頂戴(くびちょうだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,756 字 · 20 頁
……それは然うと此処は何処だ?」
駕籠の戸をあけて覗いたが、
「よろしい、ここで下ろしてくれ」駕籠から出ると
「それ酒手だ」
「これは何うも、莫大もない」
喜んで帰る駕籠舁を見すて、赤川大膳先へ進んだ。
薄墨のように淀川堤、眼の前に長く横仆わっている。人家も無ければ人気もない。見下ろせば河原で枯れ蘆が、風に吹かれて揺れている。暁近い月の下に生白く光るは川水らしい。
「たしか此方の方角のはずだ」
上流の方へ歩いて行く。
と、果して蒲鉾小屋が、ハタハタと裾を風に吹かせ、生白く月光に濡れながら、ションボリとして立っていた。
「うむ、これだな」と立ち止まったが「さあ何んといって声をかけたものか?」思案せざるを得なかった。「乞食と呼ぶのも変なものだ。御免というのも変なものだ。まさかに許せなどともいわれまい。……はてな?」
というと深呼吸をした。芳香が馨って来たからである。
「香を焚くという噂だが、成程な、香の匂いだ。しかも非常な名香らしい」
とはいえ勿論野武士育ちの、ガサツな赤川大膳には、何んの香だか分らなかった。
そういう赤川大膳にさえ、無類の名香に感ぜられたのだから、高価なものには相違あるまい。