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げかしつ
高野聖
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《高野聖(げかしつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,264 字 · 104 頁
しが、このとき鈴の音を聞くと斉しく身を起こして、ひらりと御者台に乗り移れり。
渠の形躯は貴公子のごとく華車に、態度は森厳にして、そのうちおのずから活溌の気を含めり。陋しげに日にみたる面も熟視れば、清※明眉、相貌秀でて尋常ならず。とかくは馬蹄の塵に塗れて鞭を揚ぐるの輩にあらざるなり。
御者は書巻を腹掛けの衣兜に収め、革紐を附けたる竹根の鞭を執りて、徐かに手綱を捌きつつ身構うるとき、一輛の人力車ありて南より来たり、疾風のごとく馬車のかたわらを掠めて、瞬く間に一点の黒影となり畢んぬ。
美人はこれを望みて、
「おい小僧さん、腕車よりおそいじゃないか」
奴のいまだ答えざるに先だちて、御者はきと面を抗げ、かすかになれる車の影を見送りて、
「吉公、てめえまた腕車より疾えといったな」
奴は愛嬌よく頭を掻きて、
「ああ、言った。でもそう言わねえと乗らねえもの」
御者は黙して頷きぬ。たちまち鞭の鳴るとともに、二頭の馬は高く嘶きて一文字に跳ね出だせり。不意を吃いたる乗り合いは、座に堪らずしてほとんど転び墜ちなんとせり。奔馬は中を駈けて、見る見る腕車を乗っ越したり。御者はやがて馬の足掻きを緩め、渠に先を越させぬまでに徐々として進行しつ。