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まぞう

魔像

林 不忘

線上閱讀林 不忘《魔像(まぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 頁

青空文庫

だから、その張本人の近江之介がいなくなると、自然喬之助のことは忘れて、話題は急速にほかのことへ移って行った。駒場の鳥狩のこと、その時の拍子木役のむずかしかったこと、馬のこと、酒のこと、煙草のこと、刀のこと、女のこと、など、など、などである。ときどき、お終いに来て笑い返して出て行った喬之助のことが、誰かの胸へ帰って来て、ふっと気味の悪い沈黙の種となった。何だか、あの喬之助を見損っていたようにも考えられるのである。悪かったかな――かすかに、そんな気もした。

で、大迫が、また喬之助を会話へ持ち出して来て、

「笑いおったな。あいつめ。気が狂れたように笑いおった。拙者も、いささかぎょっとして、髷を持つ手を離してしもうた。いや、豪胆な笑いじゃったぞ」

「何の、豪胆なことがあるものか。大迫氏は御自身を台に判断して、あの卑怯者を買い被っておらるる」

「そうかな」

「そうとも。たといかの柔弱男子が悲憤慷慨したところで、畢竟人形の泪じゃわい。何ごとが出来るものか」

荒木陽一郎が、請け合うように、こう言い切った時だった。

部屋の横手に、お庭に面して窓がある。

閉て切った障子越しに、寒ざむしい白い陽ざしが覗いていた。