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まぞう
魔像
林 不忘
線上閱讀林 不忘《魔像(まぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 頁
土間にずらりと祝い酒の鏡を抜いて、柄杓が添えてある。煮締めの大皿、強飯のお櫃が並んでる。下戸には餅だ。飲むは食うは大さわぎで、やがて銘々土産の折りをぶら下げて口々に大旦那の幸兵衛に挨拶しながら帰って行く。
広い台所に立って、一々応対をしている六十余りの禿茶瓶が、その筆屋幸兵衛だ。首の廻りに茶色の絹を巻いて、今日だけは奥と台所をいったり来たり、一人で采配を揮ってる。息子の幸吉は、三十近い、色の生っ白い優男である。父親の命令を取り次いで、大勢の下女下男に雑用の下知を下しながら仔猫のように跳び廻っていた。
「どうも若旦那のお酌は恐れ入りやす。いえもう、遠慮なく頂きやした――おや、これはこれは大旦那様、こん日はおめでとうございます。何ともはや、お盛んなことで――いえね、大した評判でございますぜ。今度の筆屋さんの御普請と来た日にゃアほんとに、追従じゃアございません、へい、三井さんや鴻ノ池さんでも、こう申しちゃア何ですが、あんな豪勢な真似は出来めえ、なアんてね、へっへ、江戸中の職人衆のとり沙汰でございますよ。へい」
なんかと言うのを、幸兵衛父子は、軽く左右に受け流しながら、それでも、流石に嬉しそうににこにこしている。