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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
線上閱讀内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 頁
のあらゆる煩悶苦痛を免るる事なので惟行の如く早く世を去るのは、つまり厄介な人間生活の年明けである、息を引取るまでこそ志の遂げざる事を口惜くも思うが、死んでしまえば空々寂々で、楽しみのない替りに悲しみもない、今まで脳で働いていたエネルギーは宇宙に遍満せる絶体エネルギーに帰してしまったのである。そして私も早晩そうなると思うと、彼が先駆けしたのを羨しくも思った。そんな事で今度はさほど悲しみの感じも長く跡へは残らなかった。そこでこの惟行の屍とかつて死した楽女の屍は青山の墓地へ葬って置いたが、楽女の石碑は建てたけれども惟行の方は墓標の木の建っているのみで、久しく石碑を建てなかった。それは私が金に不自由なのと、一つは石碑を建てるならいっそ一家共同の石碑を建て、内藤家代々の墓とするがよいと思ったからである。そして幸に大正八年の末に、下山霜田氏の周旋で私の書いたものが売れて、いわゆる揮毫料が手に入ったので、その中から一番奮発して右の石碑を造る事にした。尤も両児は屍のまま一坪の墓地へ埋めたのであるが、これから私は勿論段々と死んで行く家族も、屍は必ず火葬にして、そしてこの石碑の下へ骨だけを葬る事と極めた。