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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
線上閱讀内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 頁
その翌日は山陽汽車に搭じて尾の道まで行って、何とかいう旅店に投じた。元来ならこの午後に汽船で郷里の高浜まで行くのだが、その頃高浜の石崎汽船の一艘が修繕中で、午後には便船がないということで、余儀なくここに一泊した。この地にも同郷人の福富恭礼氏が居たので、その案内で或る寺院等を見物したが、随分古い由緒のあるのもあった。翌日はいよいよ内海通いの汽船に乗った。この際同郷の伊与日々新聞社長柳原極堂氏から二人まで社員を差し越された。尤もこれは私の歓迎会の総代という事であった。そこで船中ではこの人々と種々話しをして、それに気を取られて、いわゆる瀬戸内海の島々の風景などは見ずにしまった。尤も私は船嫌いなのでこの航路の横潮にはいつも閉口するのであるから、立って風景を眺めるよりも寝ていて話しをする方が実際勝手もよかった訳もある。夕刻にいよいよ高浜へ着いた。ここには大勢の人に出迎われて、親戚もあれば旧友もあり、多方面の人々であったが、こんな時には哲学で悟を開いた私もやはり訳もなく嬉しい。その晩は従弟で医者である天岸一順の宅へ落着いた。この後ちはこの宅と娘婿の山路一遊の宅とあちらこちらと止宿して、二週間ばかりも滞在したのである。