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めいせつじじょでん

鳴雪自叙伝

内藤 鳴雪

線上閱讀内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 頁

青空文庫

賄賂は定まり通り納めてあるので、皆無事に通るを得、次の間の宿で休息し、再び常の行装になって、旅行を続けたのである。

町人百姓は手形を住地の役筋から貰って通ったものである。この手合の女の検査は武家の女ほど喧しくはなかった。町人百姓が何か事故があって手形を貰わなかった時は、関所の前の宿で偽造の手形を高価で売っているのを買って、それで通ることも出来た。この事は黙許になっていた。その偽手形も買わぬ者は関所を通らずして抜道を通った。なんでも手形を持たぬ町人百姓が関所に来ると、役人は『これからどちらへ行ってどう曲ると抜道があるが、それを通る事は相成らぬぞ。』といって、暗に抜道を教えたということである。また或る人の話に、手形の無い者が通りかかると、役人が『こら』と声をかける。その時その者はクルリと向きをかえて、今ま歩いて来た方角へ顔を向けて蹲む。『手形があるか。』と問う。『ありませぬ。』と答える。『それならば元へかえせ。』と厳しく叱りつける。すると『はい』といって向直って関門を出て、サッサと通ってしまう。こういう事も黙許されていたという。旧幕時代は諸事むつかしい法度があるとともに、またその運用に極めて寛大な所もあったのである。