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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

兄から貰った垂氷を、私はお膳の傍に置いて、それを見ながらゆるゆると食事をしましたが、終った頃には、もうすっかり痩せ細って、コップの底には藁屑まじりの濁った水が溜っているだけでした。その後、何か欲しいというと、「垂氷とどっちだ」と、よく笑いぐさにされました。

雪国の越後などでは、その垂氷を「かなッこおり」といって、いたずらな子供が手拭で捲いてお湯屋へ持って行き、裸の人に附けて驚かすとか聞きました。

通学

兄が洋行されてからは、千住の家はひっそりとしました。病家へ出かけられる父の後姿も寂しそうです。向島時代と違って、千住では話の合う人も少いのでしたから。その頃次兄は本郷で下宿住いでした。それで兄のいられた部屋を使えといわれます。尤もそれまでもお留守の時は、そこで本を見て時を過したので、そろそろ退庁の時刻になると、そこらを片附けます。取散らしてあるのはお嫌いでしたから。それで洋行中も、机の上の本を積重ねようとしては、ああお留守だったと、がっかりするのでした。

本棚の片隅には、帙入の唐本の『山谷詩集』などもありました。真中は洋書で、医学の本が重らしく、一方には馬琴の読本の『八犬伝』