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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《黒田如水(くろだじょすい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 頁

青空文庫

枕元で語るそれらの便りを、官兵衛は始終楽しげに聞いていたが、そのうちに、湯疲れが出たのであろう、

「すこし眠たい」

と、いって眼をふさいだ。

昏々と眠った。

そして、どれ程な刻を経た後だろうか、ふと眼をさましてみると、枕元には静かな灯し火がともっているのみで、宿の者の跫音も聞えず、宿直の太兵衛、善助の影も見えず、ただ窓外の松風の声だけがひとり夜更けを奏でていた。

――水が欲しい。

と思ったが、誰もいないので、ただ眸を以て、上眼づかいに枕元を見まわすと、官兵衛はとたんに、ぎくとした容子であった。それは何か妖しげなものでも見たときのような愕き方に似ていた。

「……た、たれだ?」

思わず呼びかけたのである。明りも仄暗くしか届かない部屋の片隅に、壁をうしろにして、消えも入りたげに、じっとうつ向いている若い女の姿を見出したからであった。

たれだっと、一喝されると、彼女のほうでもぎくとしたらしかった。ちらと、ひとみを官兵衛の方へ上げたが、すぐ両手をつかえて、

「菊でございまする……」

と、聞きとれないほど低い声で答えた。

心契

一

「なに。於菊? ……」と、いぶかしげであったが、官兵衛はなおその眼を大きくみはって、――