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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《黒百合(くろゆり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 78,148 字 · 154 頁
四十九
あれはと見る間に早や近々と人の形。橋の上を流るるごとく驀直に、蔵屋へ駆込むと斉しく、床几の上へ響を打たせて、どたりと倒れたのは多磨太である。白墨狂士は何とかしけむ、そのままどたどたと足を挙げて、苦痛に堪えざる身悶して、呻吟く声吠ゆるがごとし。
鍵屋の一群はこれを見て棄て置かれず、島野に義作がついて店前へ出向いて、と見ると、多磨太は半面べとり血になって、頬から咽喉へかけ、例の白薩摩の襟を染めて韓紅。
「君、どうしたんです。」と島野は驚いたが、薄気味の悪さうに密と手をとって、眉を顰めた。
鍵屋では及腰に向うを伺い、振返って道が、
「あれ、怪我をしておりますようです、どうしたんでございましょう。」
勇美子も夜会結びの鬢を吹かせ、雨に頬を打たせて厭わず、掛茶屋の葦簀から半ば姿をあらわして、
「石滝から来たのじゃあなくって。滝さんとお雪はどうしたろうね、」とこれは心も心ならない。道はずッと出て手招をした。
「義作さん、おおい、ちょいとお出よ、お出よ。」
「へッ、」と云って、威勢よく飛んで帰る。
「何だね、どうしたのさ、あれ大変呻吟くじゃあないか。